本書は、論理学の解説書であり、発達史であり、伝記であり、そして物語である。本書の根幹をなすのは、論理学の萌芽からニューラルネットワーク、P=NP問題、DNAに至るまでの歴史である。その最初は細く、やがて大河となる歴史の中に、ライプニッツ、ペアノ、フレーゲ、カントル、ヒルベルト、ゲーデル、チャーチ、ポスト、テューリング、シャノンといった数学者、思想家たちがエピソードとして現れては消えて行く。 大学で哲学と論理学の教鞭をとった著者、デイヴィッド・バーリンスキは、過去のロジックを語っていくうえで極めて感覚的な手法を採っている。情景描写、数式、学者たちのエピソード、言葉遊びや文学のパロディ、ソースプログラム、著者によるフィクションが、交互に、または唐突に現れる。それは、論理式に肉体を持たせるためでもあり、またときとして、理解を拒んでいるかのような印象を受けるときもある。まるでストーリーを拡散させることで、考えるよりも感じることに読者の主眼を移しているかのようである。 しかし、その不思議な体裁の根幹にあるのは、1つは論理学と、論理学を愛していた人々への愛である。フレーゲの精神的な暗部と晩年や、ポストの家族写真についての描写等で見せる著者の表現力は、本書がまるで叙事詩であるかのような厚みを持たせている。その一方で、論理学が人間や自然の営みの中から普遍的な公理を生み出してきたことを考えると、さまざまな表現を用いることで、その中に共通の普遍的な真理を描き出そうとする二重の試みがあった気がしてならない。 独立分詞構文がふんだんに用いられる原書自体の難しさもあり、慣れるまでは読みにくいところもあるだろう。しかし、行きつ戻りつ読み進むにつれ、知的探求心を満足させてくれることは間違いない。週末にでも、時間をかけてあせらずにゆっくりと、著者の謎かけを解き明かしていくのが正しい読み方だろう。そして、その価値は十分にある。(大脇太一)
論理学とUボートの関係についての考察
述語論理、チューリング機械、ゲーデル、ライプニッツとか出てきます。
この本を読んで、記号論理学に取り憑かれて以来、私の技術系サラリーマンとしての生き方は変わりましたね。
「∃∀⇒∩∪」などの記号が読める様になってくると、また楽しいのです。
「論理学をつくる」がお勧めです。
他にも、
エニグマとUボートの話。
元OSSだったレーデンヘッファー...
稀に見る「奇書」?
この本をアルゴリズムについて説明した一般向け科学書とは間違っても考えてはいけない。通常の一般向け科学書は「わかりやすく」その題材を説明するものだが、この本は極めて凝った文体と著者作の寓話を駆使して、アルゴリズムとそれに関わった稀代の数学者たちのドラマを描き出そうと試みている。訳者あとがきによれば、訳者はそれほど原書の凝った文体を日本語訳には反映させなかったようだが、それでも私には十分奇妙な文章に感じられた。しかし一方で扱っている人物、内容は極めて高度で、類書は他に見あたらない。数学に文学を見いだそうとする人にはこれ以上の本はないだろう。著者はプリンストン大学で分析哲学と論理学の博士号を取得、いくつもの大学で数理論理学の教授を務めた後、現在は著述業に。次は著者自身の伝記を読みたいものだ。
早川書房
「無限」に魅入られた天才数学者たち ゲーデルは何を証明したか―数学から超数学へ 異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念 物理学と神 (集英社新書) 形式論理学―その展望と限界
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